【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第14章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜⑤
「私は瑞が好きだ。夏兄様。もう私は夏兄様と僑香と3人で暮らす日々を望んではいない。」
月娘のその言葉は間違いなく夏潤には聞こえていた。
それが自分を拒否する言葉だと分かっていた。
だけど夏潤は笑って月娘に言った。
「だけど、皇弟が望んだ事も、結局はお前との婚姻では無い。」
そうニッコリ笑って言う夏潤に、月娘は眩暈がした。
この数年間はなんだったのだろうか。
壬氏に乞われて、その心に全てを預けた。
そして彼のために全てを捧げた。
だけど結局壬氏は離れて、今は側室でさえ月娘の手には入らない。
「月娘様、殿下はそんな事を望んではいないです!!」
僑香が月娘の肩を掴んだ。
必死にその顔を覗き込むが、月娘は僑香と目を合わせる事はしなかった。
だって。
私が望んだ事は瑞のお嫁さんになる事だけだった。
彼が皇太子としての責務も全て一緒に背負う覚悟を持っていた。
辛い時も幸せな時も2人一緒に。
だって、それが皇太子としての壬氏と結婚する事だと分かっていたから。