【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第14章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜⑤
「月娘様…、今は殿下の気持ちに寄り添う事は出来ないでしょうか…。」
高順は月娘を慰めるつもりでそう話した。
だけどその言葉は月娘にとって、突き放される事と一緒だった。
ーどうして…。
どうして瑞も高順も分かってくれないのだろう。
月娘は高順の話を聞いても、その涙が止まる事は無かった。
ー
ーー
ーーー
その後、壬氏は皇太子の身分を皇弟に戻した。
壬氏と帝の間で何があったのか月娘は知る術も無かった。
そして自身が後宮に入る準備をしている間、壬氏は月娘を枋家から出る事を禁じていた。
自分の棟で月娘が見たのは、壬氏が出した婚姻延期の冊封だった。
その冊封を見ながら、これまで泣き腫らした月娘は、もう涙は出なかった。
(……どうして……どうして瑞は私にこんな事が出来るの?)
冊封を握りしめて、月娘は顔を歪ませた。
その月娘の背中を見て、僑香もまた同じ顔をしている。