【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第14章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜⑤
「瑞!嫌よ!」
「高順。月娘を連れて行け。」
壬氏の言葉と共に、高順が部屋に入って来て月娘の肩に触れた。
その時に少し壬氏の目が細くなった。
「瑞!話を聞いて!」
月娘は何度か叫ぶが、壬氏の顔がこちらに向く事は無かった。
壬氏は月娘が高順に連れて行かれるまで、決して月娘を見なかった。
叫んでいた月娘の声が遠くなった。
もう聞こえなくなった月娘の声に、やっと壬氏は肩の力を抜いて息を吐いた。
自分で高順に頼んだくせに、高順が月娘に触れただけで怒りが湧いてきた。
(俺はこんな事でも腹を立てるのに、月娘は俺が他の妃を娶っても平気だと言うのだろうか…。)
壬氏の中で、月娘との気持ちの溝を強く感じた。
少し前まで月娘は自分と同じ気持ちだと思っていた。
しかし、それはどうやら自分の思い過ごしだった様だ。
月娘の愛は自分とは違う。
そうハッキリと分かって、壬氏は胸が痛むが自分の意思を曲げようとはしなかった。