【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第14章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜⑤
これ以上後宮入りが長くなれば、自分の悪評はどんどん広まる。
息を吸って座っているだけで、月娘は今では後宮入りを狙う毒女となっている。
切実に訴える月娘の顔から、思わず目を逸らしたかった。
だけど壬氏は強く月娘を見て、またその意思を変えようとはしなかった。
「月娘…。月娘を側室で後宮に入れると言う事は、他の妃を娶ると言っている様なモノだ。俺は決してお前以外妃を娶る気は無い。」
自分の訴えに揺れない壬氏を見て、月娘はとうとう涙を溢した。
我慢した涙は大粒の水滴を月娘の頬に伝わせた。
「……そんな事……。侍女見習いになった時から分かっていました。」
月娘は眉間に皺を寄せて、壬氏を睨みながら言った。
途端に壬氏の顔が曇った。
『そんな事?』
月娘からその言葉が出た時に、壬氏は月娘から手を離した。
「……瑞……。」
月娘から手を離し、壬氏はその手で自分の顔を覆った。
月娘からの呼びかけにすら、その表情を見せないようにする。