【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第12章 【R指定】初恋的回忆〜初恋の思い出〜③
「僑香(きょうこう)。」
僑香の名前を呼んで近付いて来たのは壬氏だった。
後宮の外で、僑香達侍女は自分達の主君が戻ってくるのを待っていた。
相変わらず顔を隠して、コソコソとこちらに来る。
「皇太……。」
僑香が挨拶しようとするのを、壬氏は口を塞いで止めた。
「その名前はいい。」
自分を皇太子と呼ぶなと言う事だとすぐに分かった。
「今日は鼻血を出さないな。」
最初に触れた時は鼻血を出していた僑香をからかう様に壬氏は言った。
「……………。」
その笑顔には危なかったが、今日は何とか鼻血を出さないで済んだ。
「…月娘様に会いに来られたのですか?」
「……………。」
僑香の目が冷たい事に、壬氏は苦笑いをする。
僑香でこの対応なのたから、月娘はもっと怒っているのはよく分かる。
「……誤解が多々あったんだ。」
「……殿下…。私ごときが話す事ではありませんが。何故月娘様だけ邸に招かないのですか?」
「……………。」
今回だって、すぐに壬氏が公に月娘を招いていたら、こんなに拗れる事は無かったのだ。