【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第11章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜②
齢10歳。
壬氏と月娘が出会って3年が過ぎた。
「……アレは何かしら、僑香(きょうこう)……。」
そう細い目を向ける月娘の目線の先には、壬氏が他の名家の娘と並んで東宮を歩く姿が見える。
「……周(しゅう)大臣のご令嬢の雪娥(がこう)様です。」
僑香の言葉を聞いて、月娘の目がさらに細くなる。
「隣に居る女人はどうでもいいのよ。それよりあの光景は何?」
月娘が指を指す先には、目を細めて微笑を浮かべる壬氏と。
それを受けて倒れそうなほど顔を赤くしている雪娥。
それを見ている下女や下男さえも、その微笑だけで顔を真っ赤にしている。
「まるで色気の大安売りね。」
「月娘様…その表現は……。」
布で顔を隠しているのに、その奥の顔を想像するだけでため息が漏れる壬氏に、月娘は顔を顰めて言った。
壬氏はこの3年間でかなり変わった。
幼かった面影は一気になくなり、子供なのに大人びた顔をして。
ああして皇室の庭を歩く姿を見る。
壬氏が通る度に、誰もが彼を振り返り。
壬氏はその視線を当たり前の様に受け流したり、たまに視線を向けたりしている。
壬氏と視線が合った者は、それだけで沸騰した様に顔が赤くなっている。