【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第10章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜
困った様にチラッと下に居る枋太師を見た月娘に、壬氏はその手を強く握った。
「明日も来てくれる?」
「明日?」
月娘は真剣な顔で自分を見る壬氏にさらに困った。
月娘にとって皇室はあまり楽しい所では無かった。
思いの外、年の近い壬氏と話が出来て楽しかったが。
月娘は自分の家で僑香(きょうこう)や夏潤(ハユン)と遊ぶ方が楽しかったからだ。
(遊び相手が居なくて寂しいのかな…。)
月娘は壬氏が誰だがこの時は分かっていた。
枋太師が西宮に向かう場所の中で、何度か皇太子と言う言葉が出てきた。
きっと彼が皇弟で、自分は今日、皇太子に会う為にここに来たのは理解している。
しかし、何故月娘と皇太子を会わせたかったのか。
幼い月娘には、大人の意図なんて知る由も無い。
「……いいよ。」
そう言えばきっと父親も喜ぶのだろう。
月娘はそんな事を考えながら、ニッコリと壬氏に笑ってみせた。