【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第10章 初恋的回忆〜初恋の思い出〜
壬氏と月娘が出会って恋に落ちたのは、誰もが羨む様な感動的な瞬間では無い。
「………降りれなくなった……。」
ほんの少し。高順を困らせたかっただけだ。
また最近気に入っていたおもちゃを取り上げられた。
それがどうしても腹ただしくて、壬氏は自分が隠れて見つからなければ大人が困ると考えたのだった。
東宮の庭から離れて、壬氏は西宮の庭まで来ていた。
目に付いた大きな木を見つけると迷わずにその木に登った。
少し隠れて、高順の困った顔を上から見てみたいという好奇心だった。
「……降りれなくなった(2回目)」
どうやって登ったのかも分からないほど、壬氏は自分が思ったより高い場所に来てしまった。
このまま誰も見つけてくれなかったらどうしよう。
バランスを崩して下に落ちてしまうかもしれない。
大人を困らせたいと思った壬氏の行動は、自分を困らせただけだった。
ここで泣き叫べは事は済んだのかもしれない。
だけど壬氏は気に入ったおもちゃを取られた腹正しさがまだ強く。
むしろ、自分が怪我をしたり見つからなかった方が腹の虫も治ると思った。