【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第9章 花街に毒の花が咲く⑤
(…… 月娘…いつから…。)
俺とお前の間に知らない事が出来たのか。
壬氏は月娘に送る手紙の筆を止めた。
自分の知らない月娘が居る。
そう分かっていても、原因は何か分からない…。
(…瑞……。)
私達が出会った時を今でも覚えている?
月娘の正気を保つのはいつだって。
初めて出会った時の情けない壬氏の顔だ。
貴方がいるから、この理不尽な世界でも生きていける。
貴方は皇太子だったから。
私が正妃になるしか無かった。
そうでなければ、到底私達はあの日の様に笑い合えないと分かっていたから。
苦しくは無かった。
その先に瑞月との未来があったら、どんな事でも耐えてこられた。
だけどおかしい事に。
いくら思い出しても、私達には楽しかった思い出の方が少なかった。
それでも必死にしがみ付いて来たのは。
瑞が私のたった1人の愛する人だからだ。
ただそれだけだった。