【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第1章 後宮の外に毒の華が咲く
猫猫は月娘に気がつくと、軽く頭を下げた。
猫猫の頭を上げさせるには、自分が通り過ぎないといけない。
月娘は何処に行く気も無かったが、猫猫の脇を通り過ぎる事にした。
「!!」
その時に月娘からふと嗅いだ匂いに猫猫は顔を上げた。
「月娘様。」
猫猫から名前を呼ばれて、月娘はゆっくりと振り返った。
「その胸元にあるのは毒でございます。」
少し恍悦の笑みを浮かべてペロッと唇を舐めた猫猫に、月娘は扇の奥で口角を上げた。
「…貴方がその事を言いふらす様な馬鹿な子じゃ無い事を祈るわ。」
月娘が毒を持ち歩いている。
そんな噂が後宮でだった時に、猫猫の命は無いのだろう。
そんな事が容易に想像できた。
それだけ言うと、月娘はまた、何事も無かったかの様に歩き出した。
(……まぁ毒と言っても……。)
あの程度の香りならたいして量を持っていない。
しかし、月娘から匂った毒はトリカブトだった。
服用すれば呼吸困難などで死亡する猛毒だ。