【薬屋のひとりごと】後宮の外に咲く毒の華【R指定】
第5章 花街に毒の華が咲く
「凄い!目元だけなら別人だわ!」
「仕上げは、口に差す朱は少し蜂蜜を加えたモノを…。」
猫猫が朱を入れると、月娘の唇がいつもよりふっくらして見える。
「凄いですお嬢様!いつものお嬢様のキツい印象が無いです!」
「…………。」
興奮して失礼な事を言っている僑香は許してあげよう。
確かにキツい目元は垂れ下がっていて優しい印象を与えている。
これなら、身近な人間でなければ、確かに月娘だとは気付かない。
「気に入ったわ。猫猫。」
何よりこの化粧は月娘の美貌を最大限に引き立ててくれている。
「私達も負けてられないわね!」
月娘を見て、今日お披露目される妓女達が猫猫から化粧を受け取った。
「こんな化粧も服も着るのは初めてで、今とても気分がいいわ。」
「月娘様、妓名は決めましたか?」
猫猫の言葉に月娘はニッコリ笑った。
「月娘(げっしょう)に決めたわ。」
妓名を名乗ると、本当に自分が違う人間に生まれ変わった様だ。
この姿と名前ならなんでも出来る様な気がした。