第2章 人形の家
「居間ぁ!?」
「ナル!!」
「居間に、子どもみたいなのが……!」
居間には子どもの顔のような物が浮かんでいる。
それも1人や2人だけではなく、何人もの子どもの顔が浮かんでいた。
子どもの霊がいる。
そう認識した途端、居間から子どもたちの叫び声のような泣き声が響きだした。
アー アアー……アー……
おぞましいと感じてしまう。
何人もの子供達の声に背筋を震わせていれば、ぼーさんの叫び声が聞こえた。
「……うわっ、なんだこりゃあ!」
モニターへと視線を向ければ、居間にぼーさんの姿があった。
「まとわりつくな、このっ……」
子どもたちはぼーさんを邪魔するかのような、排除しようとしているのかまとわりついていた。
「……ナウマリ サバ タタキヤテイ ビヤリ サラバモッケイ ビヤリ サラバタ タラクーー」
子ども達の声が変わる。
悲鳴から苦しげな悲鳴へと変わっていき、ぼーさんの唱える真言が子供たちを苦しめていると分かった。
(苦しめてる……でも、止められるわけじゃない……)
聞きたくない。
そう思って、思わず耳を塞いでしまおうとした時だ。
「ーーーこ……」
子どもたちの悲鳴の間に、大人の女性の声が聞こえてきた。
「あれ……?」
あたしが呟くと、麻衣も気付いたようでモニターを凝視する。
「……の……こ……」
ぼーさんの背後にゆらりと黒い影が揺れている。
その影は徐々に人の形へと変わっていき、女性のような姿を作っていた。
「……とみ……こ、とみこ……。わたしの……子……」
影がそう言葉にしている。
その影を視界に捉えた瞬間、背筋が凍る。
何が……とは言えないが、とても嫌な感じがする。
「後ろだ、ぼーさん!」
「なに!?……って、おい。なにもいないぞ!」
「見えてないのか……!」
ぼーさんは後ろを振り向くが、何処にいるのかとキョロキョロと探している。
見えないということは、危険だと思った瞬間、あたしは動き出していた。
「結衣!?」
「よせ、結衣!麻衣!」
麻衣とナルの静止を聞かず、あたしは居間へと走っていった。
そして扉を勢いよく開けると、ぼーさんを呼ぶ。
「ぼーさん!」
「結衣!?バカ!くるな!」