第2章 人形の家
「……うわーっ。すごい家……!」
「大きくて広い……」
あたし谷山結衣は、双子の妹である麻衣と共に少し変わっているバイトをしている。
そんな変わっているバイト先の上司の名は渋谷一也、通称ナルシストのナルちゃん。
そんなあたし達は今、依頼先のお宅に来ているのだがそのお宅は洋風のりっぱな家なのだ。
大きくて広い家は、あたしたちが暮らしている家よりも遥かにすごい。
「義姉の香奈と姪の礼美八歳です。兄は海外出張中で、今はこの家にわたしたちだけなので、不安で……」
三日前、バイト先である『渋谷サイキック・リサーチ』に今回の依頼人である森下典子さんが、依頼にやって来たのが始まりである。
「家がヘンなんです。きゅうに家具がガタガタゆれたり……だれもいない部屋でカベを叩くおとがしたり、開けたはずのないドアがかってに開いてたり。とにかくヘンなことがおおくて」
その話を聞いただけで、少しゾッとしてしまう。
「責任者はどなた?」
「ぼくが所長の渋谷一也です」
「……あなたが?」
香奈さんは驚いたような、怪訝そうな表情を浮かべる。
何せあたし達双子のバイト先の所長は、まだ十六歳という未成年なのだから。
だがそれを凌駕するほどの自信満々でありナルシスト。
だからあたし達は『ナル』なんて呼んでいる。
「まあ、いいわ。ほんとうにその……幽霊のしわざなの?」
「それを調査するのがわれわれの仕事です」
そう、『渋谷サイキック・リサーチ』は幽霊やそういうのを調査する事務所であり、通称『SPR』である。
調査の際はかならず『ベース』と呼ばれる部屋を用意して、そこに大量の機材を運ぶ。
この運ぶ仕事や設置はあたしと麻衣の仕事。
「モニターの接続に異常はありません」
こちらの黒髪長身のっぽの男性は、ナルの助手のリンさん。
それ以外は何もかも分からない不明な人であり、あまり喋らないし怖い感じがして少しあたし達は苦手。
「……ポルターガイストじゃないのかなあ、典子さんの話だと」
「聞いた感じだとそうだよねぇ」
「おっ。いっちょまえのクチきくようになったな、バイトちゃんたち」
こちらの金髪長髪の人は滝川法生。
もと高野山のお坊さんであり、あたし達は『ぼーさん』と呼んでいる。