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ハツコイソウ【ゴーストハント/滝川法生】

第9章 忘れられた子どもたち


「……結衣はどうなんだ。ジーンが好きだったか?」

「うーん、恋愛的な意味では好きではないよ。というか、双子揃って人の妹引っ掻き回してくれたから嫌いになりそう」

「だいたい、ぼくとジーンを見て嫌いという人間はそうそういなかったんだがな」

「ナルシストめ」

「何が悪い」


双子揃って性格が悪い気がする。
だってジーンもちゃんと自分の正体を言えばいいのに、何も言わずにいたのだから。
いい性格をしているものだ。

溜息を吐き出して空を見上げる。
都会より田舎の方がよく星が見えるものだ。


「でも、素敵な笑顔の人だった」

「ああ」

「もう二度と会えないけど……それでもいいよ。ゆっくりと安からに眠ってくれたら」


麻衣からジーンが死んだ原因を聞いた。
そしてナルが何故正体を隠したがるのかも聞いた。
犯人の女が、ジーンを轢き殺してダム湖に沈めた犯人の女が殺したはずの人間と同じ顔を見たらどうなるか……。

話を聞いた時は納得したものだ。
同時にその話を聞いて犯人が許せなくて、辛くてたまらなかった。


「泣かないの?」

「ぼくが泣くと思うか?」

「薄情者だなぁ」

「ふん」


あたしは結局ナルがバンガローに戻ると言うまで、彼と二人でダム湖の麓で過ごした。
結局バンガローに戻ったのは朝日が昇る前のことだった。


❈*❈*❈*❈*❈*❈

ー翌日ー


午後になってナル達のご両親が到着した。
ジーンの遺体が見つかったことを聞いた、ナルとジーンのお母さんは泣いて泣いて……彼女たちに言葉をかけることは出来なかった。

少しして、落ち着いたお母さんはちょっとたどたどしい日本語で話をしてくれた。


『二人は日本語で秘密の話をするので、勉強しました』


そう少しずつ話してくれた。
それから大事そうに持っていたナルとジーンの写真をあたし達に見せてくれた。

ぼーさんと安原さんとジョンは、ナルが双子だということにかなり驚いていた。


「……ジーンが二人いるみたい」


写真の中のナルは黒い服ではない。
そして隣にいるのはあたしが夢の中で見た、頬笑みを浮かべるジーンだ。

そのうち理解した。
ナルがいつも黒い服を聞いてた理由……それは、彼なりのジーンへの喪服だったのだろう。
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