第1章 悪霊がいっぱい!?
「……なるほど、バカになるはずだな」
一瞬、双子たちはナルに鼻で笑われたような気がした。
その笑いにイラつきを覚え、麻衣は咳払いをしてからとあることを尋ねた。
「……ちょっと聞きたいんだけど。ゆうべ帰って来た……よね?」
「旧校舎に?いや、さっき戻ったばかりだが。なんだ?」
「あ、あー、ううん!なんでもない!ふんじゃ、あたしたち教室に戻るわ。またあとでね、バイバーイ!」
不思議そうにしながらもナルは学校を出る。
その後ろ姿を見送ってから、どっと結衣は恥ずかしさを覚えた。
何故、自分はナルが微笑む夢を見たのだろうかと。
「あたし達さ、ナルの微笑む夢を見たわけだよね……。なんであたしたち、あんな夢を見たんだろ……」
どうせ見るならばカッコ良い法生の夢が良かった。
なんて結衣は思っていたが、麻衣はそれどころではなくなったらしい。
顔を茹でられたタコのように真っ赤にそめて、その場に蹲ってしまっていた。
「ひゃあああああ〜〜〜〜っっ!!」
「……まさか、麻衣……あんた、ナルを!」
「言わないでぇぇ!!??」
「……趣味が悪い」
「あんたに言われたくないやい!!」
まさかの双子の妹の恋が始まるだなんて。
結衣は驚いてしまったのと同時に、なんだか寂しくなってしまった。
(そうだよね、麻衣だってもう十六歳。恋の一つや二つする年だもんねぇ……でもちょっとお姉ちゃん寂しいや)
なんて思いながらも、未だに変な声を出している麻衣を引き摺って、結衣は教室に戻るのだった。
放課後になりて。
結衣は未だに何故自分がナルの夢だなんて見たのかと、不思議に思っていた。
最初は恥ずかしいと思っていたが、よくよく考えれば好きでも無い人間の夢なんて見ることが不思議である。
(麻衣が見るならともかく、あたしはなんでかなぁ?しかも麻衣と同じ夢を見てた)
今朝、それについて不思議だと話したことがある。
だけど何度か、双子で同じような夢を見たことがあるので『まただろう』と結論付けた。
「お、いたいた」
無表情でヘッドフォンで何か聞いているナル。
夢で見たあの優しい笑顔とは全く違う表情だ。