第9章 忘れられた子どもたち
「はー……なんか分かったよーな、分からないよーな」
「む、難しぃぃぃ……」
頭がぐるぐると回っている。
難しいし、理解できるというか、頭が滅茶苦茶になりそう。
知恵熱が出てしまいそうと思っていた時である。
「──……あー……。さみーなー。やっぱ山の上は冷えるねー」
ぼーさんがぽつりと呟いた。
「えっ」
「ひょっとして風邪でもひいたんじゃないの?」
「え!大丈夫!?」
麻衣と二人で慌てていれば、冷静に綾子がぼーさんの額に手を重ねてから自分の額にも触れて熱を測る。
「……熱はないわね」
「そお?なんか熱っぽい気がすんだけどなー」
ぼーさんはぼんやりと答えながら、その視線をナルの方へと向けた。
「熱のうえの戯言なんだけどさー、ナルちゃん」
「ぼくに戯言に付き合えと?」
「──やっぱ、おまえはすげーや。そう思う」
「ボクもそう思います」
ぼーさんとジョンの言葉に、ナルは少し微笑む。
「それは……どうも」
ぼーさんは単純に素直に褒めれなかったのだろう。
あたしと麻衣と綾子はコソコソと『素直じゃないねぇ』と笑いあった。
その夜。
あたしはまたもや中々眠れずにデッキに出て、夕涼みをしながらぼんやりと考えていた。
「ダムにナルのお兄さんが……」
今も信じられない。
あのダム湖にナルのお兄さんの死体があって、ナルはそれを探していたなんて。
「はああ……」
もし、この調査が終わってナルのお兄さんの遺体が見たかったらオフィスはやっぱり閉鎖されるのだろうか。
そうなったら、もうナルにもリンさんにも会えなくなるんだろうか。
「どうしたー。元気がねぇじゃんか、結衣」
ふと、声がして視線を下に向けるとデッキの下にぼーさんが立っていてこちらを見て笑っていた。
「ぼーさん……」
いつの間にいたのだろう。
なんて思っていれば、ぼーさんがデッキに上がってきた。
「で?何悩んでんだい、お嬢ちゃん」
「その言い方、おじーさんみたい」
「誰がおじさんだい」
「自分でよく言うじゃーん」
溜息を吐き出しながら俯く。
「……ねえ、ぼーさん」
「んー?」
「あたし達って、思ったより互いのこと知らないよねぇ」
「……急にどうした?」