第1章 悪霊がいっぱい!?
「うん、気をつけてね」
双子はジョンを見送ると、2人で時計を確認した。
時刻は既に夜になっていて辺りはもうどんよりと暗くなっている。
「ナルを待つって決めたけど……」
「戻ってくるのかなぁ、アイツ」
ふう……と双子は同時に溜息を吐き出した。
戻ってくるかもしれない、その時の為にとレコーダーを設置したのはいいが、本当に戻ってくるだろうか。
「それにしてもさぁ、あたしちょっとガッカリしてて」
「あー、もしかしてぼーさんのこと?」
「顔とか見た目はどタイプだったのに、性格が残念だった」
「ドンマイ。まあ、またタイプの人が現れるさ」
麻衣は苦笑しながらも残念がる姉の背中を撫でた時だった。
後ろから足音が聞こえて、2人は同時に振り返る。
「ナル!?」
麻衣が声をかけたが、そこに現れたのはナルではなかった。
帰ったはずの黒田の姿がそこにあった。
「黒田さん……」
「どう?」
「あ……うん。黒田さんが帰った後にぼーさんと……巫女さんがもう一回お祓いしたよ。今は見回りしてる」
「渋谷さんは?」
「いないよー」
「どっか行っちゃった。あーもー、悪霊なんてホントにいるのかな」
「わたしは見たのよ」
「……そっか、そういってたよね」
だが本当にいるというのだろうか。
双子は『うーん』と唸っていると、背後の階段からヒールの踵を鳴らす音が聞こえてきた。
「……あら。子供の遊ぶ時間じゃないわよ、おうちに帰んなさい。除霊は成功したわよ」
まるで勝ち誇ったかのような笑みを浮かべる綾子に、双子は冷えた目線を送る。
「まえもそう言って失敗したじゃん」
「校長に怪我させたじゃん」
「今度はだいじょうぶよっ!」
そう言ってまた失敗するんだ……と結衣が溜息を吐き出した。
「……まだ除霊できてないわ。感じるもの、まだ霊がたくさんいる」
黒田は上を向いて、小さく呟く。
だがそんな彼女を綾子は馬鹿にしたように鼻で笑う。
「また霊感ゴッコ?やめときなさいよ、こっちはプロなんだから」
「そのかわりに、たいしたことないじゃない」
「だーいじょうぶだって。綾子はともかくおれがやったんだから」
にっこりと笑う法生とジョンがこちらにやって来る。
いつの間にか袈裟から私服に戻っていた。