• テキストサイズ

ハツコイソウ【ゴーストハント/滝川法生】

第8章 呪いの家


「冷静だったら、あんな挑発に乗るような人ではないし、そもそも度を失う人でもありません。よほど自分の失態が腹に据えかねたのでしょう。彼のプライドは途方もなく高いですから。──暫くは機嫌が悪いでしょうが」

「……そうかな」

「失態に逆上して抜いてはいけない剣を抜いた……いわば二重の失態ですからね。これで除霊にも失敗していたら憤死しかねないとそろですが」


リンさんの言葉に麻衣が笑う。


「……そだね。──ちゃんと治る?」

「もちろんです」


リンさんはちょっとだけ微笑んだ。


「やれやれだね。ナルったらホント、今回は人騒がせだよ」


あたしがそう呟くとリンさんと麻衣は『そうだ』と言わんばかりに微笑んだ。


❈✴❈✴❈✴❈✴❈✴❈✴❈


騒動が終わり、吉見家に戻るとお店はあちこち壊れていた。
彰文さんたちは『どうせとうぶんは営業できないし、宿として使ってください』と言い、有難くそうさせてもらった。

ナルと安原さんは入院。
安原さんは肋骨が折れていたらしいので、どうせ帰ることは出来なかった。

それからお葬式があった。
和泰さんは自殺、奈央さんは事故となっていた。


(皆、いい人なのに……なんでこんなことになっちゃったのかな)


そして騒動から数日。
あたしたちはナルが入院している病院へと来ていた。


「──いっやー。思ったより早く退院できてよかったなあ、少年」

「その説はどうも。次は渋谷さんの番ですねぇ」


リンさんの言う通り、ナルは見事に不機嫌だった。
今も不機嫌そうにファイルを持って、ペンを持ってベッドの上で仕事をしている。


「あたし何か飲み物買ってくるね。お茶でいい?」

「手伝いますわ」

「あたしも行こうか?」

「真砂子と二人でいーよ。結衣もお茶でいいよね?」

「うん」


あたしは病室から麻衣と真砂子を送り出した。


「ぼーさん、怪我平気?」

「もう平気だよ。治ってるし」


ぼーさんは相変わらずの優しい笑顔で微笑む。
その笑顔にほっとしながら、あたしは不機嫌そうなナルを見る。

実はぼーさんか聞いたが、彼は目を覚まして一番にぼーさんたちに謝罪したらしい。
驚きである。


「やれやれ……」

「あんま溜息ばっかり吐き出してると幸せが逃げんぞー」
/ 633ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp