第1章 悪霊がいっぱい!?
「おいっ、どーしたんだよ実験室!」
後ろを振り向けば法生に綾子にジョンの姿。
3人ともあの実験室の様子を見たようで、驚いた様子でこちらに歩いてくる。
「なによ、ボウヤ。もう帰る準備?」
「……そうですが」
「冗談でしょ!?」
「なんで!!」
まだ原因なんて分かっていないはず。
それなのに帰ると断言したナルに全員が驚いてしまった。
「事件は解決したと判断したからだ」
「除霊したのか?」
「してない」
ナルは煩わしそうに、紙の束を法生へと手渡した。
「なんだ?」
「水準測定器のグラフ。旧校舎はゆうべ一晩で最大0・2インチ以上沈んでいる。地盤沈下だ」
「なにい!?」
全員がグラフを覗き込んだが、なんて書いてあるのかそのグラフがどんな意味を表しているのかなんてさっぱり分からない。
「ぼーさん、わかる?」
「じぇんじぇん」
「あたしもわかんない……」
「じゃあなに?あの怪現象の原因はそれだってワケ?」
綾子の問にナルはまた煩わしそうにしながらも、地図を広げて見せた。
「このあたり一帯は湿地を埋めたててできた土地なんだ。チェックした井戸の数からすると、この学校の真下をかなり大きな水脈が通っているらしい。二つの井戸が今も残っていたが、水量の確認をしたら両方ともほとんど枯れかけてた……そういうことだ」
「……どういうことさ」
「意味がわからんのよ、ナルちゃんや」
「……だから、ここは湿地を埋め立てた場所だからもともと地盤が弱い。そこに枯れかけた地下水脈、そのせいで地盤沈下がおきた。とくに激しいのがこのあたり。建物の一方が急速に沈んでいるせいで、あちこちにねじれやひずみがきてる」
トントンと、ナルは旧校舎の見取り図を指さした。
「なんてこった。じゃあイスが動いたり屋根がおちたりってな、そのせいなわけか」
「そう。あの教室は西側の床が東側より3インチ低かった」
「3インチ……7cm半てとこか」
「じゃ、あのラップ音……」
「ラップ音じゃなく実際に建物がひずんでる音だろうな。旧校舎付近は立ち入り禁止にしてもらったほうがいい。この建物は遠からず倒壊するだろう」
その説明を受けた結衣と麻衣は、ナルに言われて後片付けを手伝わされた。
そんな時に黒田がやって来てその説明を受けたが……