第1章 悪霊がいっぱい!?
騒動で教室に戻ってきていたナルは、落ちてきた木材を手にしてそう呟いた。
『結衣、麻衣。帰っていいぞ』
『ホント!?』
『やっと帰れる……』
『そーね、アタシも帰らせてもらうわ。命があってのモノダネよ』
『正直にビビったっていえよ』
『ボクも……ご忠告に従って今日のところは帰らせてもらいますです』
ナルの言葉通り、全員帰ることになったがナルだけは残ると言った。
結衣や麻衣が『ナルも帰った方がいい』と伝えたが、彼は残ると頑なに言い、全員が彼を残して帰ったのだった。
「ホントに残ったのかなあ?ナル」
「残ったんじゃない?でもさ、また天井とか落ちたらどーすんだよ!って感じだよね」
2人は息を吐き出しながら、機材が置かれているはずの教室へと向かったが、その現場を見て唖然とした。
何せ機材のほとんどが片付けられていたのだから。
「え!?なにこれ!?」
「ナル!いないの!?」
慌てて2人は旧校舎の横に止められている車の元に向かう。
中を覗くと、やはりそこには眠っているナルの姿があった。
「いた!」
「ナールー!こんなとこで寝てたの!?カゼひくよ!」
「なんでこんなとこで寝てんのさ!」
扉を開ければナルは鬱陶しそうに眉を寄せて目を覚ます。
「……結衣と麻衣か。なんだ、こんな朝っぱらから」
人の寝起きはとてもブスと誰かが言った。
だがナルはそんな言葉は嘘だと思うばかりに、寝起きでもとても顔が良かった。
「あ、あ、あ、朝っぱらってもう十一時だよ。あっ、コッ、コーヒー飲む!?」
ナルの顔の良さにやられたのか、麻衣は顔を赤く染めている。
そんな双子の妹に結衣は眉を寄せながら、小さくため息を吐き出した。
(たしかに顔はいいんだけど、やっぱりあたしの好みじゃないなぁ……)
結衣はぼんやりと脳裏に法生の姿を思い出す。
やっぱりちょっと性格は好みではないが、それ以外はどタイプの法生。
(性格がなぁ、よければなぁ……うーん)
なんて思いながら、隣でコーヒーを手渡す麻衣に視線を向けた。
「……ゆうべなにかわかった?」
「ああ」
「へー……へー!?」
「ほんとお!?」
結衣と麻衣の叫び声に共鳴するかのように、背後から叫び声が聞こえた。