第8章 呪いの家
「そうですか……そういえば吉見家がここに移ってきたのはいつ頃だかわかりましたか」
「それが祖母にもあれ以上のことは分からないそうで……」
彰文の言葉に法生は困ったように頭をかく。
「ジョン。病院に行って靖高さんの除霊をしてみてくれ。ついでに商売っけをだして少し話をしてくるんだな。二度と馬鹿な真似をしないように」
「ハイ。やってみます」
「綾子は護符だ。家族とおれたちの人数分」
「おっけ」
「おれはちょっと出てくる。彰文さん」
「はい」
「悪いが菩提寺に案内してもらえますか」
法生は彰文と出かけ、ジョンは靖高のもと。
残された結衣たちは手分けして綾子が書いた護符を吉見家の人間に渡していく。
彰文の父母に祖母、そして姉である光可にも渡して結衣と麻衣は陽子の元に向かった。
もちろん護符を渡すために。
「結構です。いりません」
陽子は穏やかな笑みを浮かべながら、護符を返してきた。
「あ、あのでも……」
「必要なもので……」
「これを付けておくとなにか効果があるんですの?」
「ええ、あの……悪い霊を寄せ付けない護符なんです」
「体から離したら効果が無くなるので……」
「でもお風呂に入る時はどうしますの?持って入れませんよね、紙ですもの」
陽子は穏やかに微笑みながら護符を付けるのを断る。
そんな彼女に双子は困ったように顔を見合せてから、なんとかしようと悩む。
「それは、そうですけど……でもちょっとでも危険でなくするためにつけておいてください」
「お願いします」
「わかりました、そうします」
立ち上がった陽子に双子は安堵の息を吐き出そうとしたが、彼女は何故か護符を手にせずに部屋を出ていこうとする。
「陽子さん!?」
「え、あっ、あのっ、これ……」
呼び止めても聞かずに陽子は部屋を出て行ってしまう。
そんな彼女に双子は違和感を覚えたが、取り敢えず次は和歌子と克己だと二人を捜す事にした。
だがここでもまた問題が発生する。
「そんなのいらない!」
「和歌子ちゃん、克己くん!お願いだから止まって!」
「ちょっとまって。これ大事なものなの、お願いだから……」
「いらないったら!」
子供たちは護符を持った双子から逃げ出していた。