第8章 呪いの家
結衣が声をかけると、障子が開いて彰文が入ってきた。
彼はポットとコーヒーカップを手にしていて、畳の上に置いてから愛想の良い笑みを浮かべる。
「彰文さん」
「どうぞ、コーヒーですけど」
「わー、すみません」
「ありがとうございます」
双子はお礼を言いながらピタリと動きを止めた。
そして二人揃って顔を見合せてから、恐る恐ると彰文に尋ねた。
「あの……」
「彰文さん……」
「はい?」
「下の洞窟なんですけど……ひょっとして脇のほうに道があったりします?崖を抉ったみたいなの」
「でもって、石段があってお店の脇に登ってく感じで」
双子の言葉に彰文は少し驚いた表情をした。
「……行ってご覧になったんですか?」
その反応に双子は『うわー』と言いたげな表情になる。
「そんで洞窟は『く』の字に曲がってて」
「奥に祠があったりします……?」
「まさかお二人共下へ降りたんですか?駄目ですよ、あの石段は危ないんですから」
彰文の言葉に、映像を見ていた法生たちが振り向く。
「どうした、嬢ちゃんたち」
「あたしたち、またやっちゃったみたい」
「みたい」
「はあ?」
双子は法生たちに夢で見た光景を話した。
「──でね、洞窟に海から人魂が吹き寄せてくるの」
「魚とかそういうのの霊まで」
「魚の霊だあ?」
「や、へんかもしれないけどさー!そうなんだもん」
「魚だって生きてるんだし……ねえ?」
思わず双子は彰文に助けを求めるように振り返る。
彼は双子の話を真剣に聞いていて、真剣な表情のまま少しだけ俯いた。
「……あの洞窟はそうなんです。潮の関係で死体が流れてくるんです。この近辺の海で死ぬと、あの洞窟に流れ着きます。……とくに人やなんかの大きなものは。それで祠があるんです。うちの犬が流れ着いたのもあそこでした」
彰文の言葉を聞いて、結衣はナルの言葉を思い出した。
『──ここは、魂かま吹き寄せてくる場所らしいから』
その後、結衣たちは彰文の案内で洞窟に行くことに。
ちなみにリンはベースで待機である。
「──なるほど。あれが結衣と麻衣が夢で見たっていう石段か」
結衣たちは鉄格子のようなフェンスの向こう側の崖を見ていた。
そこには夢の通りの石段があった。