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ハツコイソウ【ゴーストハント/滝川法生】

第8章 呪いの家


気になって身体を起こし、障子の方へと近寄る。
するとまた『コツン』と窓に何かが当たる音が聞こえた。
恐る恐ると窓を開けてみてから、あたしは目を見開かせた。


「何これ……」


白いフワフワとした丸いものが下から登るように浮いている。
霊現象かなと思ったけれど、何だか何時もの夢と似ていることに気がついた。

あたしは眠っているということだろうか。
そう思ってから下を覗いて、あたしはまた目を見開かせる。


「……ナル」


断崖絶壁の下にはナルがいた。
彼を見てやっぱりあたしは眠っているんだと思い、柔く微笑んでいるナルを見下ろす。

ナルがゆっくりと右手をあげる。
そしてあたしを呼んだ。


「おいで、結衣」


やっぱり夢だ。
こんな優しくナルがあたしの名前を呼んだことなんてないのだから。


「うん……」


ゆっくりと窓から身を乗り出してから下へと降りる。
不思議と怖さはなくて、まるで重力に逆らうようにあたしの体はゆっくりと下へと下がっていく。
そしてナルがあたしの手を掴んでから地面に下ろしてくれた。


「あたし、眠ってるんだね……」

「そうだね」

「……麻衣も起きてくる?」

「起きてくるよ。怖い夢を見たから、嫌な思いしてるかもだけど」

「……怖い夢?」

「あとで、麻衣に聞いてごらん」


ナルは微笑む。
相変わらず夢の中では優しくて綺麗な微笑みを浮かべる彼に、あたしは少しそわそわとしてしまう。
何せナルなのにナルじゃないように感じてしまうから。


「ああ……起きてきた」


ナルの言葉に上を見上げる。
入江は完全に断崖に囲まれていて、堂々とした木組みがされていて凄いと思った。


「麻衣」


ナルが名前を呼ぶ。
それを合図に更に上を見上げれば、麻衣がこちらを見下ろしているのが見えた。


「おいで」


麻衣も同じように降りてきて、ナルが手を取る。
あたしは麻衣を見て、麻衣もあたしを見ていて小さく微笑む。


「結衣もいたんだね」

「うん。麻衣よりちょっと前に」


ふと、麻衣はナルを見てから顔を真っ赤にさせていた。
微笑まれているからだろうかと思いながら首を傾げていれば、麻衣はモゴモゴと話し出す。


「……た、大変なことになっちゃったね」

「うん」

「夢……見れた?」

「夢?──あ、もしかしてさっきの?」
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