第8章 呪いの家
見つめれ、手を握られて体温が徐々に上がっていく。
「そ、それ以外って……?」
「さあ、なんだろうな……それ以外って。でもまあ、それ以外はお前が成人しねぇと無理かな」
ぼーさんの言葉に首を傾げる。
それ以外はあたしが成人しなければ無理とは、どういう意味なのだろう。
なんて思っていると、ぼーさんがあたしの頭をぐしゃりと撫でてきた。
さっきまで異性のように接してきた癖に、すぐに子供を相手にするように撫でてくるのだから混乱してしまう。
「ま、それは追々な」
「な……どういうこと!?ねえ、どういう意味なの!?」
「まぁだ、教えてやんねぇよ。あー、アイスコーヒーが飲みてぇな。結衣が淹れてくれるアイスコーヒーが恋しい」
はぐらかされた。
その事に頬を膨らませながらも、あたしはお茶を飲む。
「もうすぐで夜中の三時か……。結衣、寝とかないと明日キツイぞ?」
「だって寝れなくて……」
「寝れなくても布団に転がるぐらいはしたほうがいい。身体を休めとかねぇと」
ほら、こういう時はまるでお父さんかお兄ちゃんみたいだ。
なんて思いながらも、確かにぼーさんの言葉は一理あると思って湯呑みをお盆の上に置く。
「じゃあ、ぼーさんの言う通りにしてくる」
「おー。おやすみ、結衣」
「おやすみなさい……ねぇ、それ以外になれるっての、いつかちゃんと教えてね?」
「……何時かな」
ぼーさんは柔く微笑む。
その微笑みが好きだなと思いながらも、あたしは部屋へと戻るのだった。
布団に入れば、眠くないと言っていたが身体が疲れていたのだろうか、それともお茶を飲んで身体が温まったせいなのか、睡魔がゆっくりと訪れてきた。
(明日……頑張らなきゃ。ナルの為にも)
目を瞑る。
すると深く意識が飲み込まれていく感覚を覚えながら、あたしは眠りについた。
コツン……と何が当たる音が聞こえる。
なんだろうと思いながらも身動ぎをすれば、またコツンという音が聞こえた。
「ん……?」
目がゆっくりと開き、瞬きを繰り返す。
そして寝返りを打ってからとある事に気づいた。
(あれ?窓の障子、誰か開けた?)
眠る前にはきちんと閉めてあったはずの窓の障子が開いている。