第7章 血ぬられた迷宮
麻衣は今がチャンスだからと、色々森さんから聞き出したようである。
あたしも興味があるのでそれを止めずに見守ることに。
「あのー……森さん」
「なあに?」
「ナルの両親ってどんな人なんですかー?」
「どんなって……普通の人よ」
「……普通の人は息子が学校にも行かずこんなことしてたら、止めませんか」
「あはは、それもそうかも。ナルのお父さんは超心理学の研究者なの」
驚いてしまった。
まさか親子二代で同じことをしているなんて……と思いながらも、そういえばと思い出す。
リンさんが『教授』と言葉にしていた。
もしかしてそれはナルのお父さんの事ではないだろうか。
「あ、ひょっとして身元調査?」
「えっ、や、そ、そんなわけでは」
「んー……そうねぇ。ナルは聞かれるまで自分のことを言わない子だけど、別に秘密主義なわけじゃないのよ。ちょっと今は事情があるだけ」
「……事情?」
どんな事情があるのだろうか。
なんて首を傾げていれば、森さんが『二人ともおいで』と手招きをしてくる。
「……これは内緒にしといてね」
内緒話とはなんだろうか。
なんて思いながら森さんに近寄ると、とんでもないことを言われた。
「実は、ナルとリンは駆け落ち中なの」
心臓が口から出るような気持ちであった。
「──とかだったらおかしいと思わない?」
とんでもないお姉さんである。
そう思いながら麻衣と青ざめた表情でいれば、森さんは楽しげにケラケラと笑っていた。
「そ……そうですよね、冗談ですよね。ナルには真砂子がいるわけで……」
「えっ、そうなの?」
「だって、櫛持ってたし。森さんも『そんなに心配だったのね』って」
「ああ!それが気になって麻衣さん元気がなかったのね」
「だ……だって」
「誤解よ!ナルだって仲間の心配くらいするわよ。表に出すの下手な子だけど、ロボットじゃないんだから」
その言葉に麻衣は何処から救われたような表情を浮かべる。
これで麻衣もウジウジとしないだろうと笑みを浮かべていれば、森さんが立ち上がった。
「誤解も解けたことだし、せっかくだから谷山さんたち食事に付き合って」
「え、でもオフィス……」
「わたしの奢りよ♡」
「「いきまーす♡」」
ー『血塗られた迷宮』完ー