第1章 悪霊がいっぱい!?
不意に麻衣が言葉を止めた。
どうしたのだろうかと彼女の視線を辿れば、一つの画面に視線が向いている。
そこであたしもある違和感を覚えた。
「……あれ?」
「……ん?」
「どうした?」
「昨日カメラ置いた教室、まん中にイスなんかなかったよね?」
「どれだ?」
「これだよ、ナル。昨日、麻衣とナル達と行った時まん中になかったよね?」
西の教室のまん中に、何故かイスがぽつんと立っている。
昨日麻衣達と一緒にカメラを設置した時に、まん中になんてイスはなかったというのに。
「……誰か西の教室に行ったか?」
「いや……?」
誰も行っていないと言う。
ナルは少し眉を寄せてから、機会を操作し始めてビデオを巻き戻していく。
ちょうど、昇降口の入口の扉が割れた所まで行った時である。
「あ……!」
端の方にあったイスが引き摺るような音をたてながら、独りでにまん中へと移動していたのだ。
「イスが……動いてる」
「……どういうこと?」
皆が唖然としている中で、冷静な黒田さんが説明を始める。
「ポルターガイストじゃないかしら。『騒がしい幽霊』って意味だったと思うわ。霊が物を動かしたり音をたてたりするのよ。そうでしたよね、渋谷さん」
「詳しいね。だけどポルターガイストとは思えないな。ポルターガイストが動かした物は暖かく感じられるものなんだが、あのイスに温度の上昇は見られない。そんな例はあまりないんだ」
「そやけどポルターガイストの条件は満たしとるのとちがいますか?」
ジョンの言葉にあたしと麻衣に黒田さんはキョトンとする。
「……ティザーヌだね」
「ティザーヌ?」
「E・ティザーヌ。フランスの警察官だったが、彼がポルターガイストの分類をしたんだ。爆撃、ドアの開閉、騒音、ノックなど全部で9項目。ここで起こった現象はドアが勝手に閉まる、物が動く、ガラスが割れたことを入れても3項目。僕はポルターガイストにしては弱いと思うが」
「じゃあ黒田さんが襲われたのは?」
「それもポルターガイストには入らないの?」
麻衣とあたしが、思い出したようにそう告げた時、ぼーさんが驚きの声をあげた。
「なんだってえ!?」
「本当よ」
「なんでそれをいわねーんだよ、ナルちゃん!」
何故かナルはあたしと麻衣を睨んでくる。