第5章 サイレント・クリスマス
法生は結衣の頭を撫でてやってから、麻衣にケンジが見つかったことを話した。
その話を静かに聞いていた麻衣は少しだけ泣きそうに目を潤ませる。
「──そっかあ。ケンジくん見つかったんだ。かわいそうにね……戻れてよかったけど」
「そだな」
双子揃って涙脆いのだろうか。
法生は麻衣の頭を撫でてやり、同じように頭を撫でていた結衣の目元を見る。
麻衣が目を覚ました安堵と、ケンジの件で大泣きしたせいで目元は真っ赤に染まっていた。
そしてまたケンジのことを思い出してなのか、目が潤んでいる。
「結衣、あんま泣くと目が腫れちまうぞ」
「うっ……」
法生は結衣の頭を撫でてやる。
そんな二人を見ながら、麻衣は湿っぽい空気を変えるために話題を逸らす。
「でも、ケンジくんには悪いけどっ、タナットに懐かれてるリンさんはおもしろかったね!」
近くにいたリンが肩を跳ねさせる。
それを見た法生と結衣は吹き出しそうになるのを耐えて、何があったのか知らない麻衣は首を捻った。
「タナット……じゃない。ケンジくんも幸せそうだったのにな。んー、でもクリスマスにまにあえたね。楽しみにしたと思うの、新しいおうちでのクリスマス」
「神父さんも今夜のミサでケンジの追悼するっていってたしな」
「よかったねぇ。……あ!見て結衣!雪!雪降ってきたよ!」
「わあ!きれーだねぇ」
双子と法生は窓に近づき、柔らかい雪が降り出しているのを見つめた。
「ホワイトクリスマスってやつね」
「ねー♡」
「ホワイトクリスマスだなんてラッキー♡」
「ところで、なんであたし寝てたの?」
「……うーん、なんでだろうねー……」
「なんでだろうねぇ……」
ーサイレン・クリスマス【完】ー