第4章 放課後の呪者
「先生は超心理学に理解がふかかった。知識も豊富で専門的なことに詳しい……めずらしいなと思っていたんです。なのに笠井さんの超能力を興味本位で面白がっているようには見えなかった──それで、もしやと思い古い資料をあたったら先生を見つけることができました」
ふと、思い出す。
ナルはあたしと麻衣に人形を皆と探すように指示を出した時、『調べ物をする』と言っていたことを。
あの時に、すでにナルは犯人が分かっていたのだ。
そしてあの時、調べ物をすると言ったのは産砂先生の事だったと思う。
「いまから二十年以上まえ、来日したユリ・ゲラーは日本にゲラリーニを産み落としました。ゲラーのスプーン曲げを見て、真似した子供たちがスプーンを曲げ始めたんです。そのうち幾人かはマスコミの注目を集めました。産砂恵もその一人だった──」
誰もが、驚きを隠せなかった。
産砂先生もゲラリーニということに。
「ゲラーの権威の失墜にあわせて、日本でもサイキック狩りがはじまりました。子どものほとんどはトリックを使ったときめつけられ、何人かはそう告白し……あるいは告白を強制、捏造された。産砂恵はトリックを告白した子どもの一人だった……」
「──わたしは!」
それまで穏やかだった産砂先生が、声を荒らげた。
表情も焦ったような、悲痛に満ちたようなものである。
「……わたしは、絶対にインチキなんてしなかった。ほんとうにスプーンを曲げたのよ。だけど、できるときとできないときがあって……なのに雑誌の記者が」
『本物の超能力者なら曲げられるはずだ。ここでやってみせてくれないか』
「そこで出来なかったらますます信じてもらえないと思って、同じゲラリーニの友達に習ったトリックを一度だけ使ったんです。その一度をたたま撮られていて……」
「……『エスパーのペテンをあばく』という古い雑誌の特集にのっていた記事ですね。連続写真で先生がイスを使ってスプーンを曲げるシーンが写っていました」
「もしかして……笠井さんがやろうとしたあの……?」
「……産砂先生、自分が教えたって……言ってた……」
初めて笠井さんと会った時に、彼女はスプーンをイスを利用したトリックで曲げようとしていた。
ナルが止めたけれど、あの時産砂先生は『わたしが教えた』と言っていたのを思い出す。