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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第1章 空からの知らせ



しかし、男はその沈黙を破り、優しく。しかし確かな声で言った。


「君の事情は聞いているよ、孤児院でのこともね」


チユはその言葉に驚き、目を見開いて男を見た。彼の瞳は、どこまでも穏やかで、チユは恐る恐る口を開いた。


「知ってて、なんで?」


男の顔に浮かぶ微笑みが少し寂しげに感じられた。


「さっきも言ったが、ダンブルドアは最も偉大で聡明なお方だ。そのダンブルドアが君を選んだんだ。」


その言葉がチユの胸を打った。


心の奥底で、彼女はずっと求めていたものがあった。
それは、受け入れられる場所、そして自分が一人ではないということを示してくれる存在だ。
しかし、その言葉が彼女には信じられなかった。


涙が頬を伝いそうになるのを必死で堪えた。


何度も何度も、自分には無縁だと思っていた場所、無縁だと思っていた未来が、今ここで実現しようとしているような感覚に襲われた。

だが、心の中でその不安と期待が交錯し、胸がいっぱいになった。



「ダンブルドアが、私を?」


その言葉を繰り返しながら、チユは無意識に後ろの羽を手で隠すようにしていた。自分の存在が本当に受け入れられるのか、まだ信じきれなかったから。

男は静かに彼女の様子を見守りながら、再び優しく言った。


「君は呪われてなんかいない。君には、他の誰にもない素晴らしい力がある。それを見つけ、育てるために僕がここに来たんだ。」


その言葉が、チユの心の中に新しい希望の芽を植えた。
これまで、誰かに自分を理解してもらえるとは思わなかった。

でも、今、目の前の男が言う言葉が胸に響き、少しずつでも前を向けそうな気がしてきた。


「私、ホグワーツに通いたい」


涙をこらえながらも、チユは深く息を吐き、改めて男を見つめた。
その瞳の中に、かつてないほどの安堵と、そして少しの不安を抱えながら。

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