第18章 目覚めの光
3人が部屋を出ると、ふいにカーテンの陰から誰かがぬっと顔を出した。
「おっと、今度は怒られずに来たよ」
いたずらっぽい笑みを浮かべて現れたのは――やっぱり、ジョージだった。
「ジョージ……!もしかして、まだいたの?」
「まあね、マダム・ポンフリーに見つかったら、今度こそ病室ブラックリスト入り確定だけどさ――」
そう笑いつつ、彼はポケットから小さな包みを取り出して、チユの枕元にそっと置いた。
「これ、渡しそびれてたんだ。俺にしては珍しくマトモなやつ」
チユがちらりと包みを覗くと、中からはほんのりとキャラメルの香り。やわらかそうなヌガーがいくつか並んでいる。
最初はてっきり、いつもの悪戯グッズかと思った。爆発するキャンディとか、舌が紫になるガムとか。
でも、包みの中の1枚のメモには『効果なし、ただの美味しいお菓子。いたずら、今日はお休み』と走り書きされていた。
今回は――ただの、優しい贈り物だった。
「……ありがとう、ジョージ」
「へへ。じゃ、俺はそろそろ退散するよ。じゃないと次はホグワーツから永久追放だからな」
そう言いながらも、名残惜しそうにカーテンの向こうへ足を向ける。そして、その前に――いつもの調子で、少し照れたような笑みを浮かべながら振り返った。
「じゃあ、また明日。パーティで会おう」
そう言い残し、ウインクひとつ。
そして、音もなくジョージは姿を消した。
チユは、胸の上にヌガーの包みを大事そうに抱き、そっと目を閉じる。