第16章 仕掛けられた罠
チユはテーブルの上に並んだ7つの瓶を、ぽかんとした顔で見つめていた。
「全然意味わかんない……」
小さな声で呟いたその言葉には、混乱と戸惑いが滲んでいた。瓶の大きさも形も微妙に違ってはいるが、それぞれが何を意味しているのか、まるで見当がつかない。
チユは視線を泳がせながら、そっとハリーの袖をつまむ。
ハリーも返答に困ったような顔で、瓶と炎を交互に見つめていた。
そんな中、ハーマイオニーがホーッと深いため息をついた。けれど、次の瞬間には、なんと小さく笑みを浮かべていた。
「え……いま笑った……?」
ハリーは思わず言った。まさかこんな状況で、笑顔が出るとは思わなかったのだ。
「すごいわ!」
ハーマイオニーが目を輝かせて言った。
「これは魔法じゃなくて論理よ! パズルなの。呪文でも魔法でもなくて、頭を使う試練だわ!」
チユはハーマイオニーをきょとんと見つめた。
「頭……使うの……?」
「そうよ。大魔法使いって呼ばれる人の中にも、論理のかけらもないような人が結構いるの。そういう人たちは、ここで永遠に足止めされることになるのよ」
「じゃあ、私たちも、そうなっちゃうの……?」
チユが不安そうにハリーを見上げると、ハリーもどこか怯えた目でハーマイオニーを見た。
「もちろん、そうはならないわ」
ハーマイオニーが自信たっぷりに言い切った。
「必要なことは、全部この紙に書かれてるの。瓶は7つ。そのうちの3つは毒、2つはワイン、1つは黒い炎を通り抜けるための薬、もう1つは紫の炎を戻るための薬よ」
彼女は紙を手に取り、視線を集中させる。
ハリーが瓶に目をやりながら、少し焦った声で言った。
「でも、どれを飲んだらいいか、どうやってわかるんだよ?」
チユも不安げに身を縮めた。
「間違えたら、死ぬ……?」
「多分、そうだね……」とハリーが小さく頷いた。
その言葉に、チユの顔が青ざめる。けれど、そんな彼女のそばで、ハーマイオニーはまっすぐに紙を見つめ、真剣な顔になった。
「ちょっとだけ待って。すぐに分かるわ」
彼女の声は落ち着いていたが、どこか興奮を含んでいた。問題を解く手応えを感じているようだった。
震える唇をきゅっと結んで、彼女は静かにハーマイオニーの背を見守った。