第15章 森への足音
「それじゃ、しばらくは俺について来てくれ」
ハグリッドに従い、森のはずれまでやってきた。
「あそこを見ろ。銀色のものが見えるか?ユニコーンの血だ。何者かに酷く傷つけられたユニコーンが森の中にいる。今週になって2回目だ。皆でかわいそうなやつを見つけだすんだ」
ユニコーンの血――?
チユはぎゅっとローブの裾を握りしめる。
こんなに神聖で、純粋な生き物が、傷つけられるなんて。胸が締め付けられた。
「ユニコーンを襲ったやつが、先に僕たちを見つけたらどうするんだ?」
マルフォイは恐怖を隠しきれない声で聞いた。
「俺やファングと一緒におれば、この森に棲むものは誰もお前たちを傷つけはせん。道をそれるなよ。では2組に分かれて別々の道を行こう。そこら中血だらけだ」
「僕はファングと一緒がいい」ファングの長い牙を見て、マルフォイが言った。
「よかろう。……断っとくが、そいつは臆病だぞ」
ハグリッドが肩をすくめると、マルフォイの顔が一瞬こわばった。
「そんじゃ、ハリーとハーマイオニーは俺と一緒に行こう。ドラコとネビルはファングと一緒に別の道だ……で、チユは――」
「ネビル達と一緒が良い」
マルフォイと2人きりになんてしたら、ネビルが可哀想だ。
「ふん、好きにすれば?」
マルフォイは少し鼻を鳴らして言ったが、どこかホッとしているように見えた。
「わかった。もしユニコーンを見つけたら緑の光を打ち上げる、もし困ったことが起きた赤い光を打ち上げろ。そんじゃ、気をつけろよ。出発だ」
森は真っ暗でシーンとしていた。少し歩くと道が二手に分かれていた。ハグリッドたちは左の道を、ファングの組は右の道を取った。
「……うう、やっぱり帰りたい」
ネビルが不安そうに呟く。
「大丈夫だよ。ネビルのことはちゃんと守るから」
チユはできるだけ明るく言って、彼の肩を軽く叩いた。
「女に守られるなんて恥ずかしくないのか、ロングボトム?」
マルフォイがニヤリと笑う。
「ファングに守ってもらおうとしてるマルフォイよりはマシなんじゃないの?」
チユがすかさず返すと、マルフォイの表情が一瞬固まった。
「なっ……! べ、別に守ってもらうつもりなんて……!」
マルフォイは顔を赤くしてそっぽを向く。
「ふふっ」
チユは思わず笑ってしまった。