第10章 ハロウィンの大惨事
授業が終わると、グレンジャーと組まされていたロンは、ぶすっとした顔をして不貞腐れていた。
「気持ちは分かるけど、そんな顔しないでよ」とハリーが言う。
「そうだよ、今日はせっかくのハロウィンなんだからさ」と、チユも軽く肩をすくめて優しく言った。
「誰だってあいつには我慢できないよ、悪夢みたいな奴だ」ロンは不満そうに答えると、顔をしかめてそっぽを向いた。
「まぁ、そうだね…」と、チユは少し考え込んでから、あっさりと応じる。「――いてっ…」
その時、誰かが急いでチユにぶつかり、何も言わずに通り過ぎていった。
顔を上げると、それがグレンジャーだと気づく。だが、驚いたことに、彼女の目は赤く、頬には涙が伝っていた。
「今の、聞こえた?」
チユは軽く呟き、目の前で目を真っ赤にしている姿に思わず息を呑んだ。普段の冷静で自信に満ちた彼女が、こんなにも無防備で、ひどく傷ついているように見える。チユは心の中で何かがざわつき、急に心配になった。
彼女の知識をひけらかす話し方に、上から目線で物を言う姿勢は確かに気に入らない。
けれど、陰口や噂話に悩まされたことのある自分には、その辛さがよく分かっていた。
それなのに私は今まで、なんて酷い態度をとってしまったのだろうか…。
チユは自分を責めるように、胸が苦しくなった。
「それがどうした?本当のことだろう。あいつに友達がいないっていうのは」
ロンが言う。彼の言葉は少し気になる様子だったが、すぐに意地っ張りに答えた。「皆そう言ってるんだから、僕は関係ないさ」
「きっと大丈夫だよ。彼女のことだから、次の授業にはもう前のめりになって手を挙げてるよ」ハリーが言うと、ロンとチユもそれもそうか、と頷いた。
だが、その言葉が心に響いても、少しの心配が胸に残った。