第5章 【ご主人様】
「主様」
「.....」
「主様」
「..............」
ーーーー仕方ない...アレをやりましょうか....
「私の声が聞こえませんか、主様...」
ふうっと、耳に息を吹きかけた。
「うわわっ!!凛ッ!?いつからそこにいたんだ!?」
私の主様ーーー寅正様は、読んでいた小説を落とした。
ふうっ...と息をつく。
「以前、"俺を呼びかけても返事しなかった際は、このようにしろ"と主様がご命令なさったので...」
と、私は無表情で、白い手袋をはめ直した。
ーーー私、凛は、この主様に、執事"役"として飼われているのです。
「あ、そ、そうだったか....」
と、主様はコホン、と咳払い。
ーーー主様の屋敷の家事等行う、本物の執事は他に多数おります。