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愛おしい彼は、僕の...《R18》

第9章 【初恋】




〈季太の初恋編、李太視点〉


「うわぁ〜...やっぱりアノ子好きだなぁぁ〜っ次の修学旅行で同じ班にならねぇかな...」


中学生の頃。前の席の海里に話しかけていた。クラスメイトの初恋の女の子を眺めながら。


「...誰が?」


その頃から美しかった海里は、俺の顔を覗き込む。距離が、半端なく近い。


「えっ...?あっ...」


海里は若干怒っているのか、真剣な眼差しで俺を見てくる。
美術の教科書で見た、美人画よりも綺麗だった。


「あ、ああ...えっと...」


気まずくなって、海里から顔をそらす。


「誰が、好きだって?」


だけど容赦なく、顔を海里の方に向かせられる。強引に。


「えっ...いやっ、あ、あの子だよ!いてぇなっ」


ビックリしたせいもあって、ものすごくドキドキしてしまった。


...もしかしたら、俺はその頃から海里が好きだったのかもしれない。


見えない初恋を、海里で経験していたのかもしれない。...多分。



(海里の初恋編、海里視点〉


「海里くん、綺麗だね」


それは誰にでも言われる言葉だった。


でも、何故か...その男の言葉だけは響いてしまう。


それは李太と出会う前の、小学生の頃の事だ。


自分の容姿にだけに露骨に興味を示す子供達の中で、その男は最も異質だった。


「海里くんは、ほっぺたにある産毛もとっても綺麗だね」


下敷きで俺の顔をそよぐ同級生の男。


「...やめて」


本来だったら、もっと嫌悪感を示しても良かったけど、不思議と悪くない気持ちだった。


この男は今、そよがれている僕の産毛をまじまじと見つめているのだろう。


「ねぇ、ちゅーしてもいい?」


何されても許されると思ったのか、調子に乗り始めた。


心の中ではいいよ、と返事していた。でも、それは俺が変態扱いされてしまう。


「...産毛にならいいよ」


軽く冗談を返したつもりだった。


その時に、結局ほっぺたにキスをされてしまった訳だが。


だけど俺はもう、初恋の男の顔を思い出せない。


あんなに、純粋に好きだったはずなのに...


今ではすっかり、李太で塗り替えられてしまった。

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