第8章 【ヌードモデル】
「えーっと..ここか...?」
地図アプリを開いて、場所を確認する。
"一条絵画研究所"、...近くにある看板にもそう書いてるし、ここで合ってるっぽいな。
「...」
若干汗が出て、緊張してきた。
俺こと田中一(たなかはじめ)22歳は、人には珍しがられるバイトをやっている。
『えーっ、またお前ヌードモデルやんのぉ!?』
大学で、同じ選択科目を採った友達に驚かれる。
つい数10分前の事だ。
俺がやる予定のヌードモデルとは、絵画を描く用の為のモデルだ。指定されたポーズを、数時間裸で取り続ける。
『うん...』
『でぇっ!?なんで!?それってちょっと...なんか恥ずかしくね?』
友達は、精一杯言葉を選んだつもりだったのだろう。本当は危ない目に遭ったりはしないの!?という事を喋りたかったらしい。
『でもなぁ、結構良い金額稼げるんだぜ?』
『ホントに大丈夫かよ〜!って、もう行っちゃったしよぉ!』
友達の反対も振り切ってここに来た訳だが...
「なんか...流石にちょっとは緊張してきたな...」
ドキドキとしてくる。
でも、今回俺を描くのは男性の画家さんだって言うし...
女性だったらちょっと遠慮するところだったけど...
ゴクリ、と喉を鳴らして研究所のドアの扉を開いてみせた...