第1章 【第1話】ニートを拾って
「何この兄ちゃん、次から次へと防御力低い乙女の心を滅多打ちににしやがって、こういうプレイスタイルがお好みなのか。なんつう紳士。
いや格好からして、ナイトだから、ナイトっぽい言動してもおかしくはないけど。
突っ込んだらボケるし、高確率でカウンターのスーパースマイル光線放つし。
この難敵に、私はどう立ち向かえばいい?!
ヒットポイントがゼロとなる前に行かないと……っ」
「よくわからないけど。降ろす気はないよ」
「なんでですか?!」
「僕を置いてどこかへ行くつもりなんだろう」
「よくわかってるじゃないですか」
「それは良かった。君と意思疎通ができたんだね。とても嬉しいよ」
「私はすごく複雑ですよ」
「大丈夫。僕達きっとわかりあえるさ」
「言った傍から分かり合ってねえええ!
言葉のデットボール散々交わしといて、どこからそんな自信が出てくるの?!」
「これから、二人の溝を埋めるために、じっくり付き合っていけばいい。
そうすれば、絶対理解し合える日がやってくる」
「何百年後の話だ。いらないです、そんな体力と精神力が根こそぎ消滅しそうなお付き合い。
あの、すみません。気遣ってもらっといて、非常に悪いんですけれど、マジで急いでるんです。
ていうか、ちょっと待ってください。
さっき、僕を置いてとか言いませんでした。私が1人になると何かまずいんですか?」
「すまない。実は君を帝都に連れて行かなければならない」
「帝都? ……はあ?」
彼は少し表情を曇らせて、意図の飲み込めない私を宥めるように説明し始めた。
「今後の詳しい予定は、騎士団長――アレクセイ様に報告してからになるけれど。
君を帝都ザーフィアスへ護送することになると思う」
――ザーフィアス?
「本日の夕刻アスピオから、ここ、シャイコス遺跡の上空で不可解な天体観測があったとの報告を受けたんだ。
騎士団長の命の元に駆けつけてみたら、一部の者しか知るはずもないこの場所に、不思議な格好をした君が倒れていてね」
「待って、ちょっと待って下さい!
今ザーフィアスって言いませんでした?」
「ああ。それがどうしたんだい?」
「いや、その、知り合いから同じ国の名前を聞いたことがあったから」
ユーリが暮らしていた下町は、ザーフィアスにあると聞いた。
関わりがあるに違いない。
