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月の祈り

第1章 目覚め


どこからか風の音が聞こえてくる。

空は青く、明るい日差しが差し込んでいたけれど、私はその景色に何の感情も抱けなかった。

体が重くて、頭がぼんやりしていて、何が起きているのか、どうしてここにいるのか、全くわからなかった。

「ここは…どこ?」

どこかに問いかけるけれど、周りには誰もいない。

私はただその場に立ち尽くし、何もかもが不安に思えていた。

なぜ、こんなところにいるんだろう?さっきまで何をしていたんだろう?それすら思い出せない。

頭の中は霧がかかったようにぼんやりとして、何も見えない。

立ち上がると、足元がふらつく。

体が、どうしてこんなにも思うように動かないのだろうか?

周りを見渡しても、全てが未知のもので、私はただその場にいるだけのような感覚に襲われる。

「……誰か」

その時、ふと、声が響いた。

「お前、誰だ?」

振り返ると、そこに立っていたのは村人らしき人たちだった。

私の姿を見て、驚きと警戒の色を浮かべている。

「え?」

頭が混乱して、何を言うべきかさえわからない。村人たちは私をじっと見つめている。

「化け物だ……!」

その言葉に、私は足がすくんで動けなくなる。

化け物——それはどういう意味だろう?

どうしてそんなふうに言われるのか、全く理解できなかった。

彼らの目に浮かぶ恐怖と嫌悪感が私を圧し潰していくようだった。

「何者だ?」

周りの人々の目がどんどん冷たくなっていくのが感じられた。

「化け物じゃないか!?」

「こんな奴、不吉を呼ぶだけだ!」

その言葉が私を突き刺した。

私は必死で何かを思い出そうとしたけれど、何もわからない。

何も覚えていない。それなのに、村人たちは私を見て、恐れ、怒っている。

「化け物め!」

「出て行け!」

叫び声が響くと共に石を投げられる。私はその場で震え、足がすくんで動けなかった。どうしてこんな目に遭っているのかも分からず、ただその場で立ち尽くしているしかなかった。

自分がどこにいるのか、何をしているのかも分からないまま、周囲の人々の冷たい目線だけが私を追い詰めていく。

私はただその声に従って足を踏み出した。

自分がどこに向かっているのかもわからなかった。

ただ、遠くなる村の景色を背にしながら、私は何も見えない暗闇の中へと歩き始めた。
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