第7章 運命の人
じっと真剣な瞳をする蜂楽を見て、柚は今まで逃げていたことを反省せざるを得ない。蜂楽の真摯な気持ちを宙ぶらりんにしてしまったこと。
もう正直に話すしかなかった。
「私、恋愛感情とか、よくわからくて…。両親が離婚してて、きっと誰かと恋愛や、将来結婚しても上手くいくはずないって思ってるからかな。蜂楽くんが嫌いとかではないんだけど、誰かと付き合うとか考えたことなかったから…」
「嫌いじゃないってことは、好きってこと?」
「人としては好きなんだけど、恋愛の好きとは違うっていうか…」
「どう違うの?」
「どうって…」
わからないから困ってるのに。
「俺はね、柚ちゃんが他の男と仲良くしてたらそいつを許せないと思う。柚ちゃんは俺が誰かと付き合っても何にも思わない?」
「それはちょっと複雑だけど、蜂楽くんが好きな子と付き合って幸せになるなら、私も嬉しいよ?」
「俺が好きなのは柚ちゃんだよ?俺のこと幸せにしたいなら彼女になってよ」
ぐるぐる廻って、最初に戻ってしまった。
カフェの席は半個室。場所は一番奥で、ほとんど人は通らない。
柚と向かい合わせに座っていた蜂楽は、彼女の隣に移動した。
「…なによ」
柚はテーブルに両肘をついたまま、訝しそうに彼を見る。
男の子なのにきゅるんとした笑顔が可愛い。なのにサッカーしてる時は別人みたいにかっこよくてずるい。
これが恋だと言われたらそうなのかもしれない。
でも私の恋心なんかよりも、蜂楽にはサッカー選手になって成功してほしい。
日本代表になって、海外で活躍して。それをテレビ越しでいいから眺めるの。
隣の席だった男の子は自分の夢を叶えたんだって、それが私の誇りになる。