第7章 運命の人
トン、トン、と小さく蹴り上げたサッカーボール。不意に予想外の軌道を描き、柚の足が届かない所へ転がっていく。
「あー、もう!!」
何度練習しても上手くならないリフティング。近くにいた小学生が呆れたように口を開く。
「下手くそ…。ちょっと貸して」
小学生が簡単そうに10回リフティングすると、そのままドリブルしてサッカーゴールに向かってボールを蹴り込んだ。
「ゴーーール!!」
(……ムカつく)
人手が足りないからと柊に誘われて柚は兄がコーチを務める少年サッカーチームの手伝いに来ていた。
ていうか、今朝から兄の様子がおかしい。そわそわしたり、人の顔じっと見つめてきたり。
練習は既に終わって、レギュラーの選手が数人残って自主練をしている。
ブルーロックの試合の影響でチームの士気は上がっていて、入会希望者も増えているのだとか。
サッカーボールを見るとちらつく、ハニーレモン色の瞳の彼。
(もうやめよ)
わざわざ何で蜂楽廻を連想するようなことやってんだろ。
今朝、柚が起きた時には蜂楽はいなかった。早朝に母親が迎えに来て家に帰ったらしい。