第6章 トラウマ
「あー、お風呂気持ちよかった♪」
お風呂上がりの蜂楽の髪の先からはぽたぽた水が垂れている。
「ちゃんと髪も乾かしなよ」
「乾かして♡」
「自分でやって」
「えー」
蜂楽は面倒くさそうにドライヤーのスイッチを入れる。絶対家で乾かしてないでしょ。だからいつも跳ねてるんだよ。
髪をかき上げると黄色い髪が見え隠れして、ちょっと別の人みたい。
「乾いた!」
半乾きそうだけど、もういいか。私、お母さんじゃないし。
「柚ちゃん、今日はありがとね♪」
2階への階段を上がる。背後からついて来ている蜂楽はお兄ちゃんの部屋で寝てもらう。せいぜいサッカーを語り合うといい。
「うん。おやすみ」
そう言うと、自分の部屋のドアノブに手を掛けた。その上から重なる、蜂楽の手。
「待って。俺まだ、話し足りないんだけど…」
「お兄ちゃんの方がいいんじゃない?」
サッカー詳しいし、多分部屋でわくわくしながら待ってる。それに自分の部屋に男子を入れるのにはそれなりに勇気がいる。ただでさえ、パジャマ姿も見られたくないのに。
蜂楽は不満そうに頬を膨らませる。
柚が何とか誤魔化そうとした時、窓の外がピカッと光り雷鳴が轟いた。その瞬間、家中の電気がプツっと消える。雷がすぐ近くに落ちたみたいだ。