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隣の席の蜂楽くん【ブルーロック】

第1章 隣の席の蜂楽くん


 蜂楽廻にはサッカーがこの世のすべてだ。

 朝も昼も夜も夢の中でも考えるのはサッカーのことばかり。そんな彼にとって部活以外の学校生活は退屈そのものだった。
 高二になって、同じクラスになった隣の席の柚が気になっているのは彼女からいつも甘い香りがするからである。

 学級委員でもある柚は何かと蜂楽の世話を焼いていた。大体蜂楽が提出物の期限を守らなかったり、教科書を忘れたりするせいなのだが。
 ちなみに蜂楽は柚の苗字"小鳥遊"が読めない。一度聞いたが忘れてしまった。それ以来、彼女のことを委員長と呼んでいる。他の奴らも呼んでいるしいいじゃん。


「あー、おいしかったなぁ!委員長のどら焼き!」
 柚からどら焼きをもらった蜂楽はご機嫌だった。何がいいことありそう♪
 部室で練習着に着替えると、リフティングしながら校庭へ向かう。
「今日もやろうぜ、かいぶつ!」
 その日、蜂楽は3本シュートを決めた。


 今日は球技大会がある。サッカーを希望したのに無理やりソフトボールに入れられてしまった。
 前日、正確には夜中の三時までプレミアリーグの試合を見ていた蜂楽は寝不足だったが、柚達クラスメイトが見守る中、ちゃんと打席に立ちツーベースヒットを放った。

「いいぞ!蜂楽!」と、普段怒ってばかりの担任からも声援が届く。
(いっちょ盗塁でも狙いやしょうかね♪見ててね、委員長♪)
 次のバッターのボールの行方を見守っていると、そのボールはあろうことか柚に直撃した。
 えらいこっちゃと柚に駆け寄る。

「委員長!!」
 声を掛けるが柚は目も開けない。とっさに彼女を抱え上げ、足は保健室に向かっていた。
 ベッドに横になった柚の顔をじっと蜂楽は見つめていた。担任が家の人に連絡して、もうすぐ迎えがくるらしい。

(大丈夫かな、委員長…)
 サッカーで鍛え上げたゴツゴツした自分の体と違い、抱き上げた柚は思ったよりも華奢で柔らかかった。
 球技大会に戻る気にはなれなくて、柚の顔を見ながら隣のベッドにごろんと横になる。途端に睡魔が襲ってきた。

 ジーコ、メッシとサッカーをする夢を見た気がする。


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