第2章 夏休み
二人がたこ焼きを食べ終わった頃、ひゅーっと音がして、一発目の花火が上がり始めた。歓声と共にドンドンと次々と夜空に花が開く。
「きれーい」
「たーまやー♪」
どきどきすることばかりだけど来てよかった。蜂楽も楽しそう。花火が終わってしまうのがもったいないな。
楽しい時間は短いもの。最後の特大花火が上がって、周りの人達もぽつぽつと出口に向かう。
「よっと…、あ、やば」
階段から立ち上がろうとしたら、慣れない下駄で足元がふらついた。
とっさに蜂楽が柚の左手首と腰に手をやって支えてくれた。耳のすぐ近くで「危ないよ」と声がする。
近い。近すぎる。
「ごめんね、蜂楽くん。もう大丈夫だから」
距離を取ろうとするが、左手首を掴んでいた蜂楽の手がスルリと下にさがって指が絡まる。
「帰ろっか。柚ちゃん」
蜂楽は柚から目を逸らして、前を向いた。繋いだ手は離されることなく、そのまま人混みの中を歩く。
心臓がずっとどきどきしていて、帰り道にどんな話をしたのか覚えてない。