She is the pearl of me. @ 忍足侑士
第40章 デートの日2
✜
女子高生時代に彼氏がいた確率は低い、という真珠。
「なしてそう思うん?」
「なんていうか...リアリティが無かった?
彼氏とかデートとか」
友達の恋バナ聞くのは好きだったけど、と、ドリンクスタンドで買ったフルーツ入りのアイスティーをストローで掻き混ぜる真珠。
「どっか、浮世ごとっていうか...
フィクションの世界?
マンガや本の中の出来事、って感じで、自分のこととして考えられなかったなぁ」
「芸能人とか、誰がかっこええとか好みやとかも無かったん?」
「んー、めっちゃファン!って人いないし...
ドラマとか本でもさ、この人かっこよかった!って思っても、それはそのキャラクターがよかったのであって、恋ではなかったし、言わば『推し』状態よね。
恋ってこういうことなんだ、って本当にわかったのって...」
そこまで言って、プラカップの紅茶をストローで吸い上げる真珠を、侑士はカフェ・ラテが入ったカップに唇を付けたまま見つめる。
「えっと...察して?」
えへ、と笑う真珠を見つめたまま、侑士は口を開いた。
「気づいたきっかけ、知りたいねんけど」
「そこを察してよ」
「意識してくれたきっかけくらいは知りたいわ」
「ほら、前にも話したでしょう?
まだ、恵里奈のきょうだいだってことすら知らなかった時のこと」
「なんやったっけ?」
「恋バナしててね、恵里奈が何人か男の子の写真を見せてくれたの。
『こん中やったら、どんな人がええの?』って」
ストローにかき混ぜられた紅茶の中の氷が、カラカラと鳴る。
「発表会だったのかなぁ?
集合写真だったの。
アイスブルーのドレスの恵里奈と、スーツ?タキシード?みたいな黒のジャケットのゆうが、何人かと一緒に写ってた」
アイスブルーのドレス、と考え、同じ音楽教室でピアノを習っていた姉との最後のコンクールの時か、と思い当たる。
「『この人、かっこいい』て、指さしたのがゆうだったの」
「え?」
照れたように笑う真珠。
「『美人さんだな』って、すぐ目にとまったの。
つまりは、一目惚れ?
本当に一番最初にゆうを見たのは、それが最初。
本物のゆうとまともに話したのは、ほら、玄関で鉢合わせた日だよ」
突然、写真の人が目の前にいてびっくり、と真珠は笑った。