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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第3章 ファーストチャンス



「それで、お悩みごとは?」
ん?と向かいで紅茶を飲む真珠に首を傾げる。

「朝、なんか思い詰めてるように見えたから」
その相談じゃなかったの?聞かれ、あー、と言って小さく笑う。

「もう、解決したからええんよ」
「ありゃ。じゃあ無駄に時間取らせちゃったね」
そんな事あらへんよ、と無意味にスプーンでカップのコーヒーをかき混ぜる。
「この件やったし」
トン、とテーブルのチケットを指で叩く。

「アテが無かったさかい」
「彼女さんには断られちゃった?」
思わぬ言葉に、いてへんよ!と少し声が上擦る。

「あら、意外」
「なあ、それどういう意味なん?」
「...さあ?」
「マコっさんは?おらんの?付き合うてる男とか」
「いたら男の子と映画の約束しませんって」
それもそうか、と納得し、内心、喜んでいる自分を誤魔化すためにメニューを開く。

「なんや、腹減ったから、食ってええ?」
「どうぞ、どうぞ」

 ✜

「え、あの映画、原作無いんねや」
「そう。
 主演俳優さんとお仕事した監督さんが『また彼と仕事したい』って用意したストーリーなんだよ」
「てっきり、原作あるもんやと思っとった」

そら無いわ、と、探していた映画の原作が小説だと思い込んでいた侑士は、真珠からの情報に納得した。

「彼の演出が好きならねぇ」
紅茶のカップを横に避け、携帯の画面を見せる真珠。
「ドラマもあって、恋愛もの多めなんだよね」
「好きやよ、ラブストーリー」
チラ、と向かいの侑士を見上げた真珠。

「ドラマなら、『Tell me love』とか『美しき日々』なんか有名かも」
「ああ、名前は知っとる」
「ドラマは見ない派?」
そういう訳ちゃうけど、と片付いた皿をテーブルの脇に避ける。

「続きもん見てまうと、先、気になるやん?
 翌日試合や言う時に見てもうて、朝から続き気になってソワソワした無いし、それやったら、休みの日に一気に見るんが好きや」
「なるほど。
 舞台なんかは見る?」
「見るよ」

紅茶のカップを置いた真珠は、す、と背筋を正した。

「私も、侑士くんにお願いがあります」
神妙そうな顔に、なに?と身構える。


隣に置いていた鞄から取り出した封筒を、両手で恭しく侑士に差し出した。

「なんやん?」

どうぞ、と言われ、恐る恐る封緘が開いた封筒を手に取った。

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