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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第3章 ファーストチャンス



 ✜

「今日の練習は以上だ」

高校でも、1年生にして部長の座に就く跡部の言葉で部活が終わる。

最後列に並んでいた侑士は、その途端に駆け出した。

一番乗りで部室に入り、ウエアを脱ぐ。

「侑士、すげぇ急ぐじゃん?」
どうしたの?言う向日に、予定あんねん、と手早く着替える。
制服のワイシャツを着かけて、やっぱやめた、とロッカーからタオルを掴んで、奥のシャワールームに駆け込む。

(汗くさいんは嫌や)
いつもならボディシートで済ませるところを、シャワーを浴びる。

少し濡れた髪をタオルで拭き、制服を着込む。
荷物を手早くまとめ、お先やでっ!と部室を出る。

入口で跡部とすれ違った。
「あーん?忍足、このあと」
「すまん!メッセージ飛ばしてくれっ」
早足に、と言うよりも駆け足で去っていく。

「なんだ、あいつ」
部室に入った跡部に、さあ?と宍戸は首を傾げた。

「映画の時間が迫ってた、とかじゃない?
 それか、デートだったりして」
すでに部室で寝る体勢に入っていた芥川の言葉に、宍戸と向日は、デート!?と叫んだ。

「誰とっ!?」
「知らないよ〜」
「忍足がそんな余裕のないスケジュール組むか?」
跡部に言葉に、確かに、と顔を見合わせる部員たち。
しばらくの沈黙のあと、いつもより手早く下校支度を済ませた向日は、どうするっ!?と嬉しそうにする。

「忍足、気付くと思うけど」
「わかんねぇじゃん!」
「はっ、バカらしい」

なんだよ跡部は気にならねぇの?と、向日はつまらなさそうにした。

 ✜

待ち合わせをした駅前のファミリーレストランに入ると、すぐに真珠を見つけた。

席まで行くとすぐに気づき、昨日ぶり、と耳に当てていたイヤホンを外して微笑んだ。

向かいの席を勧められ、ラケットバックを肩からおろしてかける。

「あの、ホンマにすんませんでした。
 変な気、使わせてもうて...」
「ううん。こちらこそ、ごめんなさい。
 侑士くんに嫌な思いさせちゃったんじゃないかと思って」

なにか頼む?と注文用のタブレットを見せてくれた。

「マコっさんが謝ることちゃうよ。
 姉ちゃんが暴走したんやし」
「ふふ。侑士くんは、まさに『名は体を表す』だね」

おおきに、ととりあえずドリンクだけ頼む。

「侑士くんのタイミングでいいよ」

真珠はそう言って、しずかに水を飲んだ。

 ✜
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