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She is the pearl of me. @ 忍足侑士

第1章 新境地



充電器につながった携帯が起床を知らせる。

ぼやぁ、とした視界の向こうにクローゼットの壁。
あれ?と目を細める。

(制服...)

先週までと違う制服にしばらく考えて、そうやっ!と跳ね起きる。
時計は07:02。

(今日から朝練あるんやった)

いつもより17分遅刻に慌てて着替え、しっかりせえ、と自身を叱咤する。

私室の扉を開く。
「びっ、くりしたぁ」
「っこっちもや」
扉の前には母。
「朝練習、もうあるんでしょう?」

間に合う?と聞く母の隣を抜け、リビングへ。
鞄と上着をその辺に放って洗面所に向かうと、ちゃんと掛けなさい、と叱られた。

「うわっ」

洗面所の扉を開けると、ヘアアイロンで髪を巻く姉がいた。
邪魔すんで、と自分の歯ブラシに手を伸ばす。

「ちょ、邪魔っ!キッチン使うて」
「すぐ済ますっ」

姉に文句を言われながら歯を磨いてリビングに戻ると、朝食の支度がされた机につく。

「はい、ゆうちゃん」
向けられたタブレットに、おはようさん、と声を掛ける。

-ゆうちゃん、高校はどうや?-
「制服変わったくらいやわ。
 そんなに中等部と変わらへん」
そうか、と画面越しの父。

「えりちゃーん!」
母に呼ばれて食卓についた姉は、まだパジャマ姿。

「着替えへんの?」
「今日、新入生の説明会で休講やねん。
 パパ、おはよう」
-えりちゃんも、おはよう-
ドイツ、どう?と聞く姉の横で、頂きます、と手を合わせて箸を取る。

「そう。ゼミも課題も大変そうや」
-無理せんようにね。
そうや、ゆうちゃん、高校でも海外合宿あるか?-
父の言葉で思い出した。

「あるで。
 確か...あっ、カナダの予定やで」
-なんや、ドイツちゃうんか-
残念やなぁ、と言って画面越しに父が欠伸をした。

日本とドイツの時差は8時間。
向こうはこれから深夜になるところだ。

「おとん、無理しなや?
 こっちと違って、一人なんやから」
-ありがとう。
ゆうちゃん、2人のこと頼むな-

父に言われ、わこてるよ、返事した。

ごちそうさま、と食器を流しに重ね置く。

「ほな、おとん。
 俺、もう出るさかい」
-ああ、気を付けてな-
「おとんも、体壊しなや?」

ほなね、と画面に手を振る。

「行ってくるわ」

いってらっしゃーい、という母の姉の声に送られて、リビングを出た。

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