第1章 序章 薬の天才
少し優越感に浸る。
やっぱり年下だけど、私の方がしっかりしてるもん。
氷月は、少し困ったような笑いをうかべている。
「好きって...そういう意味ではないんですけどね...
理性が持つか心配です。」
「理性?」
理性?理性ってなんだろう。
うーん、と一生懸命考える。だが、でてこない。
これは後でお父様にきいてみなきゃ。
うーん、うーん、どうなっていると、氷月がため息をつく。
「やれやれ、そういうことですよ。はぁ、ともかく、これからもよろしく頼みます。そろそろ道場に送りますよ。」
あなたはそそっかしいですからね、と手繋ぎを要求してきた。
わたしは深く考えずに手を取り、一緒に歩き出す。
「葵」
「うん?なに?」
「お互いに大人になって、もしお互いの気持ちがあれば私のお嫁さんになってくれますか?」
「お、おおおお、およめさん!?」
氷月くんがとんでもない事をいいだした。
およめさん...およめさんって...
「それって私が暁家の人になるってこと?」
「いまは、その認識で大丈夫ですよ。
そのうち、私の方から結婚の申し出をしますよ。」
結婚...
ひょうがくんと、結婚...
まだぴんとこないけど、けっこん、という響きはわるくないのかも、と思い少しにやつく。
わかったよ、と明るく返事をかえし、それからは無言で道場へとむかった。
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