第5章 アイドルってやつ
大ちゃんが女の人と歩いているのを
見てしまった日の夜
大ちゃんは何事も無かったかのように
私の家に来て
いつもと何一つ変わらない笑顔で
私に笑いかける…
不安に思う必要なんてない…
そう思うのに
私じゃ無い誰かに向けられた大ちゃんの笑顔が
そこに重なって…
勝手に涙が溢れてくる
「どうしたの…まこちゃん!?」
なんて慌てて
私の涙を拭ってくれる大ちゃんに
"さっき一緒にいた人は誰?"
そう素直に聞くことが出来れば
きっと大ちゃんは笑顔で
私の不安を拭い去ってくれる…
そうわかっているのに
素直になれない私は
大ちゃんのこの優しい手が
私以外の他の誰かのものになることを
怖がることしか出来ずにいた…