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幻想科学物語

第5章 Z=4 ガスマスク+シールド>H2SO4






「今の私は、夜は闇の力にのまれて記憶がありません。昼間は、何とか正気を保ててます。が、おそらく時間の問題でしょう。
段々正気を保てる時間が短くなっています。もし、ルゥルゥがここに私を助けに来るなら、私を殺す覚悟でいなさい、とお伝え願えますか?」


「…シーラちゃん、必ず伝えるからね。」


シーラはその言葉を合図に、魔導を中断する。
そして、疲れたのか、力を使い切ったのか、その場に倒れ込んだ。


ゲンは、感謝の気持ちを込めて、せめて寒くないように、と近くにあった毛皮をかけて牢屋からでた。


「随分長かったですね。そんなに大怪我だったんですか?」


「氷月ちゃん、見ればわかるでしょー。ドイヒー怪我してたの。
なんたって、心臓を槍でつかれかけたんだからぁ。」


まるでほんとに怪我をしていたかのように軽口を叩く。
その軽口は嘘なのかそれとも本当の言葉なのか、氷月と呼ばれた男は読み図る。
何が真実かじっくり考えながら、牢屋の扉の縄を縛り直す。


「ま、そういうことにしておきましょう。では、いきますよ。」


「はーい。」


そう声をかけ、ゲンの前を歩き出し、ゲンも離れないようにとすぐ後ろについて歩き出す。
歩きながら、先程のシーラの言葉を考えていた。


(殺す気でこい、なんて物騒だなぁ。ルーチェちゃん、これは相当覚悟いることになるよぉ。)


来た道を暫く歩くと、やがて牢屋の入口にたどり着く。


先程までは、とても明るい昼下がりだったのに、目の前には夕日が沈み夜が訪れようとしていた。


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